食の欧米化により増加している結腸がん、排便時の出血でわかる直腸がん
大腸がんは、がんの発生部位によって結腸がんと直腸がんに分けられる。結腸がんは、主にS字状結腸、上行結腸に比較的多く見られる。結腸がんは、日本では少なかったが、近年の食の欧米化により増加している。
左側結腸がんの場合は、便を固形化するところなので、便の通過が困難になりやすく、便秘や下痢が交互に起こったり、腹痛、出血も起こる。右側結腸がんの場合は、便を液状にするところなので、多くは下痢になる。右下腹部に痛みがあらわれ貧血なども起こる。
直腸がんは、直腸の内腔の粘膜にできるがんである。排便時の出血で気づくことが多い。進行してくると、便の粘液に混じって少量の血液が付着して出てくるようになる。
はっきりとした原因はわかっていないが、大腸がんの死亡率は国によって大きな差があり、死亡率の低い国の人が高い国に移住すると大腸がんの死亡率も高くなることから、環境や食習慣が大きく影響しているものと考えられている。
また、わが国においても、食習慣が欧風化し脂肪の摂取量が増えてくるにしたがって、大腸がんの死亡率も次第に高くなり欧米並みになってきている。大腸がんの死亡率や罹患率は、肉類、卵、乳製品などの動物性脂肪や炭水化物、砂糖などの摂取が多い人ほど高い。
逆に、穀類や豆類などの植物性繊維の多い食事を摂っている人の大腸がんの死亡率や、罹患率が低いという研究結果も報告されている。
大腸がんの危険因子は牛肉、豚肉、鶏肉、ハム、ソーセージなどの加工肉である。逆に野菜類、豆類、果物、穀類、海草類、きのこ類、ビタミンC・Eは大腸がんの危険度を下げる効果があるといわれている。
いずれにしても、繊維を多く含んだ食事を摂ることは便通を整え、発がん物質と腸粘膜の接触時間を短くし、大腸がんの予防になる。
生活習慣の改善では、まず禁煙があり、お酒を飲みすぎない、バランスのとれた食事をし、決して食べすぎず、適切な運動・休養をとることを心がける。
また、近年がんの発生要因とされている「活性酸素」を抑える物質を多く含む食品を摂ることも有効ながん予防策である。活性酸素を消去する物質としては体内で作り出される抗酸化酵素と食事等から摂取する抗酸化力のあるビタミンA(β―カロチン)・C・E・B群やポリフェノール、カロチノイド、イソフラボンなどがある。
大腸がんの初期は自覚症状が無いため、早期に発見されにくい。40歳以上になったら早期発見のため定期的に検診を受けることが大切である。早期にがんを発見すれば、多くはおなかを切らなくても、内視鏡で簡単に切除できる。